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マイメリブルー 分離色の作り方

更新日:2023年5月17日




2022年9月24日(土)に、青葉画荘美術部「マイメリブルー透明水彩絵の具~分離色を作ってみよう~」を開講しました。その講座の様子をご紹介します。

【目次】


1. 絵の具とは? 2. 水彩絵の具の種類(透明、不透明、ガッシュ、チューブタイプ、ハーフパン) 3. 専門家用マイメリブルーの特徴…色づくりがコントロールしやすい ー性格を活かした「単一顔料」 ー単色グラデーション幅が広い ーMB2020 BEST10を塗ってみよう ー三原色を塗ってみよう 5. 分離色とは?~全90色の中から自分だけの分離色を作ってみよう~ 6. まとめ 7. 青葉画荘美術部とは


マイメリブルーで分離色を作ってみる前に、水彩絵具とは何か、どんな特徴があるのかをピグメントの視点から少しお話します。 これらを踏まえておくことで、水彩絵の具の色づくりがしやすくなります。

【1. 絵具とは?】


ざっくり説明すると、絵具とは「顔料を糊分で混ぜたもの」です。 色の元である顔料は、そのままでは紙やキャンバスなどに定着しない為、色を定着させる糊分が必要になります。 そして、その糊分の性質によって絵具の性質が決まります。 例えば、 ・顔料+乾性油(乾くと固まる)=油絵具 ・顔料+アクリル樹脂(水に溶けるが乾くと耐水性になる)=アクリル絵具 のような感じです。



水彩絵具は、顔料+アラビアガム


今回体験していただく「マイメリブルー」は「水彩絵具」です。 水彩絵具の糊分はアラビアガムで、水に溶いて使い、乾いてもまた水に溶けます。主に紙に描く絵具です。 マイメリブルーなどの専門家用水彩絵具は、糊分に良質なアラビアガムを使用していますが、デキストリンなどを使用した安価な水彩絵具などもあります。





【2. 水彩絵の具の種類】

① 透明水彩絵具と不透明水彩絵具(ガッシュ)


水彩絵具には、透明水彩絵具と不透明水彩絵具があります。

・透明水彩絵具…顔料+アラビアガム(多い)

アラビアガムの量が多いため透明性が高く、紙の白色や下に塗った色の影響を受けます。 ・不透明水彩絵具…顔料+アラビアガム(少ない) アラビアガムの量が少ないため、顔料がアラビアガムの塗膜から飛び出ている状態になり、ツヤのないマットな質感で、下に塗った色を多い隠します。 描いた画面を触ると、少し粉っぽい感じがします。 「ガッシュ」と呼ばれているものは不透明水彩絵具です。 (ちなみに、アクリルガッシュは不透明なアクリル絵具です) 透明な色のレイヤーを重ねて、深みのある絵を描きたい場合は透明水彩絵の具、 色の強さを前面に活かして絵を描きたい場合は不透明水彩絵の具 など、描きたいテイストによって使い分けるのがいいのではないかと思います。



② 透明色と不透明色

更にもう一歩進んで知っておきたいのが、透明水彩絵具の中にも「透明色」と「不透明色」があるということ。 これはアラビアガムの量の違いによる「透明水彩絵具」「不透明水彩絵具」とはまた別で、 アラビアガムの量が多くても、顔料の性質で下の色を覆い隠すような被覆力のある色があるということです 不透明色には、カドミウム~と名前の付く色や、白の多いパステルカラーなどがあります。



※絵具はWINSOR&NEWTONを使用 例えば画像右下のように、「透明色の青色」と「透明色の黄色」を混ぜて作った緑色は、紙の白色の影響を受けて、抜けるような透明感があります。 対して、「透明色の青色」と「不透明色の黄色」を混ぜると、やや不透明感の有る緑色ができます。 不透明色が下の色を覆い隠す力があるといっても、ガッシュ(不透明水彩絵具/アラビアガムの量が少ない水彩絵具)ほどではないのですが、 作品を描いている中で、30%の透明のレイヤーの中に、急に70%のレイヤー重なったような画面になるのは避けたいなという場合は、絵具の「透明色」と「不透明色」も気に掛けると良いかと思います。



この透明色、不透明色は、絵具のチューブやカタログに表記があります。 専門家用の透明水彩絵具ブランドの中には「透明色」「半透明色」「半不透明色」「不透明色」のように細かく分類されているものもあります。 ブランドによってその程度の判定は様々なので、参考として見ていただくのが良いかと思います。





水彩絵の具の分類は、このような感じです。







③ 絵具の形はチューブとハーフパン


マイメリブルーは、12mlチューブタイプ、ハーフパンサイズの固形タイプが出ています。



日本で馴染みのあるのは5mlチューブなので、「12mlチューブは大きいな…」と思われた方もいらっしゃると思いますが、海外ではスタンダードなサイズのようです。 セヌリエやレンブラントなどは日本でも10mlチューブですが、以前は、日本で販売されていたレンブラントも小さいチューブでした。 固形水彩絵具の「ハーフパン」は、「ホールパン」の半分のサイズのものなので、海外のスタンダードよりも日本は小さいものを好む傾向にあるようですね。 たくさん色を溶かしたり、大きな作品を描く場合はチューブタイプが便利ですし、小さい作品やスケッチなど持ち運ぶような時は、固形タイプを水で含ませた筆で溶かし出して使うのが便利です。






パレットの仕切りにチューブから充填して使うのも便利ですが、ブランドによってはタイプ毎で絵具の扱いに推奨がある場合もあります。 例えば、W&Nは充填して固めると若干溶けにくくなる為、その使い方の場合は固形タイプを推奨していたり、セヌリエは充填するとなめらかすぎてパレットの仕切りから勢いよく飛び出てしまうなど。 マイメリブルーは固形とチューブとで製法が異なるそうですが、包み紙に絵の具がつくくらい固形タイプも柔らかく溶けやすかったです。

【3. 専門家用水彩絵具・マイメリブルーの特徴】


前置きが長くなりましたが、実際にマイメリブルーを触っていきます。 マイメリブルーの特徴は何といっても、全90色が顔料の性格を活かした単一顔料絵具であること。

単一顔料絵具とは、1つの色を作るのに1つの顔料を使った絵具のことです。混色した時も、色が濁りにくくなります。 つまり、マイメリブルーは色づくりがコントロールしやすく、混色に適した絵具といえます。





また、マイメリブルーは顔料が微粒子であり、濃い色から薄い色までの単色グラデーションの幅がとても広いです。 マイメリブルーの特徴について詳しくは、青葉画荘研究部「マイメリブルーを試してみました」をご覧ください。 それを踏まえながら、「マイメリブルー2020 人気色ランキングBEST10」の色と、三原色を塗っていただき、色の溶けやすさ、混色しても鮮やかな様子を実際に体験していただきました。







マイメリブルーの三原色は、 No.256 プライマリレッド・マジェンタ(透明色、ステイニング色) No.400 プライマリブルー・シアン(透明色、ステイニング色) No.116 プライマリイエロー(透明色、ステイニング色) です。 プライマリーの名前がついているのはこの三色だけなので覚えやすいですね。 マイメリブルーの三原色は、単一顔料かつすべてが透明色なので、この三色だけでも混色してたくさんの色づくりができます。 講座が終わった後も、みなさんにたくさん楽しんでほしかったので、今回の青葉画荘美術部ではこちらの三原色を付属にしました。




【5. 分離色とは?~全90色の中から自分だけの分離色を作ってみよう~】


SNSなどを中心に、水彩画ユーザーさんの間で最近話題の分離色。 分離色とは、最初は1色に見えた色が、紙面上で2色または3色などに分離して見える色のことです。 「分離色」という言葉は最近耳にするようになったような気がしますが、現象としては昔からあります。 顔料の性質を利用して色を作成し、あえてテクスチャーとして利用したりします。(ロールの回転数が少ないなどの低品質故に色が分離してしまうという場合もあります…) 最近では、「分離色絵具」として各ブランドからも商品として出ています。 分離現象の成り立ちを踏まえれば、自分でも分離色を作ることができます。 どうして分離して見えるのか。 それは主に、顔料を2つ以上含む絵具をたっぷりのお水で溶いて紙に塗った時に、比重の大きい顔料が早く沈み、比重の小さい顔料はお水に乗って遠くに漂っていくことから、分離して見えるからです。

つまり、比重の大きい顔料を使った絵具と、比重の小さい顔料を使った絵具を混ぜれば、自分でも分離色が作れます。

ワーグマン水彩紙など、凹凸の強い紙目の水彩紙を使うと、より分離現象が見えやすいのでこちらもポイントです。

<初めて、分離色を混色で作る際の選び方のポイント>

重い顔料+軽い顔料の絵具を混ぜると分離色になるということが分かりました。 ではどうやって、重い顔料、軽い顔料の絵具を探したらいいでしょうか。 顔料の選び方、考え方はたくさんありますが、絵具の混色による分離色を初めて作る時は、下記2つの考え方が分かりやすいと思います。 1. 無機顔料+有機顔料を混色する

無機顔料は比重が重く、有機顔料は比重が軽い傾向にあります。 どれが無機顔料か、有機顔料の絵具かをピグメントの性質を把握して探すのはなかなか難しいですが、マイメリブルーのカラーチャート(リーフレット)には、ピグメント表記があるのでこれを見ながらだと選びやすいと思います。

2. グラニュレーション色+ステイニング色を混色する

水彩絵具には、透明色不透明色とはまた別に、グラニュレーション色、ステイニング色という顔料の性質が出る色があります。 グラニュレーション色は、紙面に塗った時に、ザラザラと粒状したように見える色のこと。比重が重く、紙面の凹凸に顔料が入り込む為、このような見え方をします。






ステイニング色は、発色が強く、紙を染め付ける力の強い色です。その為、描き直す為に色を除去する洗い出し技法がしずらいので注意が必要です。比重は軽いです。

※絵具はWINSOR&NEWTONを使用


グラニュレーション色、ステイニング色も、リーフレットやチューブに表記がついているので見つけやすく、重い顔料と軽い顔料を選びやすいと思います。 ただし、無機顔料がすべてグラニュレーション色、有機顔料がすべてステイニング色というわけではないのでご注意ください。 <大日本美術工芸 マイメリブルー分離色レシピより> ●No.479 ポッターズピンク(グラニュレーション色/無機顔料)+No.422 インディゴ(ステイニング色/有機顔料)


●No.412 コバルトターコイズ(グラニュレーション色/無機顔料)+No.474 ブラウンマダー(アリザリン)(ステイニング色/有機顔料)


●No.417 セルリアンスカイブルー(無機顔料)+No.258 キナクリドンレッド(有機顔料)


こちらはグラニュレーション色でもステイニング色でもありませんが、無機顔料+有機顔料の組み合わせです。

【まとめ】

いかがでしたでしょうか。 分離色絵具づくりは、マイメリブルーでなくても、他のブランドの絵具の混色でも「比重の重い絵具+軽い絵具」を踏まえれば作成可能です。 ただし、1色の絵具に複数の顔料を使っている色だと、どのような様子になるかは試してみないと分からないという、コントロールのしにくさがあります。 その点、マイメリブルーは全90色が単一顔料ですので、混色による分離色づくりがしやすい水彩絵具とも言えます。 2023年1月には、「色づくりに適したマイメリブルー」をテーマに、青葉画荘美術部を開催予定です。 詳細が決まりましたらTwitterやホームページにてご案内いたしますので、よろしければぜひご参加ください。 青葉画荘Twitterアカウント @aobagasou 記事で使用した画材 マイメリブルーHP No.116 プライマリイエロー マイメリブルーHP No.256 プライマリレッド・マジェンタ マイメリブルーHP No.400 プライマリブルー・シアン オリオン セザンヌ水彩紙 中目  マイメリブルーチューブ No.479 ポッターズピンク マイメリブルーチューブ No.422 インディゴ マイメリブルーチューブ No.412 コバルトターコイズ マイメリブルーチューブ No.474 ブラウンマダー(アリザリン) マイメリブルーチューブ No.417 セルリアンスカイブルー



【7. 青葉画荘美術部とは】

「やってみたいけど、よくわからないし…」 「いろんな画材やジャンルを試してみたい…」 「画材を揃えるのが大変そう…」

そんな「やってみたい」の気持ちを大切に、青葉画荘スタッフと一緒に挑戦していただこうという、超初心者向け体験型教室です。 青葉画荘美術部では、青葉画荘スタッフが部長となり、部員の皆さんをサポートします。 「水彩紙って何?」「油性色鉛筆って何?」 一からではなく、ゼロからスタート。 1回毎で完結する教室なので、気になった回のみ参加できます。気軽に手ぶらで参加できる講座です。

青葉画荘美術部について詳しくはこちら

参加してくださった皆さんの様子を写真に収めることを忘れていたので、準備時の様子の写真です。

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